林信行が語る「日本メーカーがiPhoneを超えるには?」 - 0 views
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林 ケータイ作りに関しても孫さんは面白いことを言っていて、他社がケータイ用OSなどからプラットフォーム化するのに対して、ソフトバンクは、各端末ごとに多様なものを自由に作ってもらい、その端末たちに対して提供するサービスレイヤーの部分で共通化を図っていくという方針だそうです。 これは非常に重要なポイントで、ほかのケータイ事業者の端末はメーカーの側で工夫する余地があまり残っていませんが、ソフトバンク的アプローチだとメーカーが、自らの強みとかを最大限に生かして、知恵を絞っていいものをつくった上で、「この端末は面白い。じゃあ、ソフトバンクで責任を持って出して、ソフトバンクならではのサービスはすべて使えるようにします」という流れになる。 両者は似ているようでも、端末メーカー側の自由度やモチベーションが全然違いますし、結局、そうやってメーカーがケータイ事業者のほうに目を向けてしまうと、キャリアの欲しがるものを作って、消費者を見ないようになってしまう。それではいいものはできない。 もちろん最近では、ドコモやauもプラットフォームで囲い込んでいるわけではなく、例えばドコモは「LIMO」と呼ばれるLinux技術やグーグルの「Android」といったケータイ用OSを取り込んで、端末の多様化を目指している。でも、ソフトバンクは最初から、そうした「端末力」、要するに個性ある端末の重要性に着目したことで、新規獲得14ヶ月連続ナンバー1などをなし得たのだと密かに思っています。
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── ほかのケータイ事業者は、なぜつまずいてしまったんでしょうか? 林 ちょうどナンバーポータビリティーが始まったくらいのタイミングで、携帯電話業界の空気がガラっと変わりましたよね。 ナンバーポータビリティーには直接、関係ないかもしれないけれど、ちょうど同じ時期にこれまでのケータイ作りのモデルがもう本当に悲鳴をあげるほどの限界にきていることが少しずつ表面化してきた印象があります。 端末メーカーは春夏モデル、秋冬モデルと年に2回、新機種をリリースする。それに合わせて毎回、新機能を投入していくわけです。そして、メーカーはユーザーに機種変更させることで儲けを出していた。これではじっくりといい製品づくりをしている余裕もないから、考える部分をキャリア任せにしてしまうことになる。それに合わせて、メーカーの創造性もしぼんでしまいます。 実はナンバーポータビリティー以後、ソフトバンクが面白かったのは、プラットフォーム戦略ではなく「端末力」に注力してきたからなんです。
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── 端末力とは何でしょうか? 林 ほかのケータイ事業者では、雑誌で読んだり、グダグダと長い説明を受けないと分からないような事業者主導の新機能を端末に付けてくる中、ソフトバンクは端末が「カラフル」とか「薄い」といったひと言で片付くような、シンプルでひきのある端末を充実させてきました。 そしてほかのケータイ事業者の場合、近年、あまりにも事業者の影響が色濃く出過ぎたため、メーカーごとの差別化が後付け的になっています。だから、スペックシートを見て「こっちはこの機能が付いている」「こっちはない」という選び方になってしまう。 一方、ソフトバンクの場合は「色重視だからPANTONE」「株取引がしたいから株ケータイ」「私はインターネットマシン」「欧米型スマートフォンがほしい」と直感で選べる。